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カテゴリー:今宵も清張ミステリー

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文庫の中の清張

今宵も清張ミステリー - 松本清張

文庫は手軽に読めて、かさばらず、電車の中でもバックから取り出してサッと読める。

 

原則として作品の最終形なので誤植や内容の矛盾は修正されている。(東野圭吾「白銀ジャック」 (実業之日本社文庫) のように文庫から単行本の例外もある)

 

清張作品も、いままでに多くの出版社の文庫に収録されている。

 

代表的なのは、新潮文庫(新潮社)、文春文庫(文藝春秋社)、講談社文庫(講談社)、角川文庫(角川書店)、光文社文庫(光文社)、中公文庫(中央公論社)、ちくま文庫(筑摩書房)、PHP文芸文庫、双葉文庫(双葉社)、河出文庫(河出書房新社)、小学館文庫、朝日文庫などである。

 

没後25年の2017年に4度目の連続ドラマ化された「黒革の手帖」(新潮文庫)は、清張の代表作になったかのようだ。歴代最年少の主役をつとめる武井咲の艶やかな写真が、従来のカバー全体を覆う。側には同じデザインのPOPが添えられていた。

 


(2017年8月赤羽駅構内の書店)

 

いまでも多くの作品を文庫で読むことができる。しかも復刊や改版の際に、文字の大きな新装版になり読みやすくなっている。

 

しかし、書店の文庫コーナーに行くと、新潮文庫、文春文庫、かつて清張ブームを牽引したカッパノベルスの光文社『松本清張プレミアム・ミステリー』以外はあまりパッとしない。

 

もともと講談社文庫に収録されていた「棲息分布」は長編ミステリー傑作選として文春文庫に、「花氷」「風紋」「殺人行おくのほそ道」は光文社『松本清張プレミアム・ミステリー』として復刻した。

しかし「草の陰刻」「黄色い風土」「連環」「黒い樹海」「塗られた本」「熱い絹」「ガラスの城」「異変街道」などは、まだ版権を手放さず、初版のころと同じカバーデザイン、版組のままである。

ちなみに「火の縄」「彩色江戸切絵図」「紅刷り江戸噂」「大奥婦女記」は、時代小説ブームの頃に新装版になっている。

 

先日、大阪の本町にある紀伊国屋書店の講談社文庫コーナーに、珍しく清張本が並んでいたのでおどろいた。

手の取って「草の陰刻」の奥付けをみると2019年に増刷していた。もちろんいまから見ると豆粒のような文字のままである。

 

中公文庫も「突風」「ミステリーの系譜」は従来のままであるが、「影の車」「中央流砂」「黒い手帖」「真贋の森」は10年以上前に改版が出ている。

 

追記(2024-2025)
「異変街道」は光文社『松本清張プレミアム・ミステリー』として文字が大きくなって復刻した。
「彩色江戸切絵図」「紅刷り江戸噂」も新たに光文社『松本清張プレミアム・ミステリー』に加わった。
「ガラスの城」「草の陰刻」「黒い樹海」は同じく講談社文庫でようやく文字が大きくなった新装版がでた。

東野圭吾『白夜行』の中の清張

今宵も清張ミステリー - 東野圭吾 - 松本清張

近鉄布施駅を出て、線路脇を西に向かって歩きだした。

十月だというのにひどく蒸し暑い。そのくせ地面は乾いていて、トラックが勢いよく通り過ぎると、その拍子に砂埃が目に入りそうになった。顔をしかめ目元をこすった。

笹垣潤三の足取りは、決して軽いとはいえなかった。本来ならば今日は非番のはずだった。久しぶりに、のんびり読書でもしようと思っていた。今日のために、松本清張の新作を読まないでいたのだ。

 

これは、東野圭吾の傑作「白夜行」の書き出しである。

笹垣刑事が読もうとしていた「清張の新作」は、なんだろう。

 

ここに出てくる、いか焼き屋のおばちゃんが読んでいた新聞の公害裁判記事から、冒頭シーンは1973年10月頃と推定される。

 

そこで1973年に刊行された作品を調べてみると、この年も多くの作品が刊行されている。

全集、文庫、再刊、新装版を除くと新作は次の4作である。

 

『遊古疑考』 新潮社 1973.9

『火神被殺』 文藝春秋 1973.8

『巨人の磯』 新潮社 1973.7

『表象詩人』 光文社 1973.2 (カッパ・ノベルス)

 

『遊古疑考』は古代史ジャンルなので除くとミステリーは3冊になる。

『表象詩人』は2月なので少し時期がずれている。したがって近いのは『火神被殺』か『巨人の磯』だ。2冊とも共通しているのは上製本(ハードカバー)で短編集である。

 

それまで活字本を読まなかった東野圭吾が高校生の頃、「松本清張」や乱歩賞作家「小峰元」の青春ミステリーで読書に目覚めた話はエッセイでよく書いている。

 

ちなみに笹垣潤三とは、「白夜行」の主人公たちが幼少期から罪を重ねていく迷宮入り事件を、刑事をやめてからも最後まで執拗に追っている主要人物である。

 

綾瀬はるか、山田孝之の2006年TVドラマ版では武田鉄矢が、堀北真希と高良健吾の2011年映画版では船越英一郎が、それぞれ笹垣潤三を好演している。

韓国版のリメイク『白夜行-白い闇の中を歩く-』も2012年に公開された。