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ブックオフ雑感-2020/8

ブックオフ - 古書店

3年前の日記より

 

ブックオフには、長い間お世話になっています。買い取りが安すぎるなど、ネットでいろいろと書かれているが、当方はもっぱら買う方なので。

 

最初のブックオフカードは、白の紙にPPを張った安手のもので、そのあと色が黄色になったが体裁は同じ。ポイントが貯まれば割引券が出た。しばらくカードがない時代があり、その後いまのTポイントカードになった。消費税も5%から8%に変わり、単行本最低100円(税別)時代が長くあり、ブックオフの売り上げ低下とともに、200円に移行しました。

 

しかし数年前からいわゆるお宝本が少なくなってきた。よく秋葉原で見かけたセドラーも何年か前に姿を見せなくなった。最後に会った時のせりふは、「もうここはあきませんわ。カス本ばっかりや。」でした。

 

せどりとは、今ではよく知られるようになったが、ブックオフなどの古書店で安くて価値のある売れそうな本を見つけ、アマゾンやヤフオフで売り利鞘を稼ぐビジネス。せどりの情報商材や塾が登場し、入会特典にバーコードを読みとるレーザーが付いていたりした。

 

それまではISBNコードをケータイで入力して本の相場価格や売れ行きを調べて買う買わないを決めていたが、レーザーの登場で簡略化された。いわゆる「ビームせどり」と呼ばれるものである。一般客からすれば、うざい存在なので、一時は「せどり禁止」の店もあったが、本が売れないブックオフ不況の今は、セドラーは多くの本を買ってくれるお客さんとしてむしろ歓迎されているのかもしれません。

 

今ではゴールデンウイークやお正月のセールは20%OFFが普通になりましたが、かっては半額セールをガンガン行っていました。新店舗の開店日や半額セールの時は、セドラーが仕入れ時で、客の会話から半分はセドラーではないかと思ったものです。初日にめぼしい本を大量に買っていくので、お一人ひとカゴと制限していました。
こういった光景はもう見られなくなりましたね。

 

ちなみに元々の「せどり」の意味は、諸説ありますが「背取り」と書いて、本の目利きが、棚にある本の背だけを見て仕入れる価値のある本かを判断し、購入する行為です。古本にまつわる連作集の梶山季之「せどり男爵数奇譚」が有名です。

 

ブックオフの値付けは、アルバイトでも分かりやすいように、通常価格で出して一定期間経って売れない本や発行年数の古い本は一律100円コーナーに回していました。この中に「お宝本」がたくさんあったのです。ピカピカの個人全集のバラ本などが大量に置かれてあって、店内を一通り回って戻ってくるともうなくなっているといった事もしばしありました。

 

何年か前からブックオフも賢くなって、古くても価値ある本は、分けて専用のコーナーに置かれてあったり、自社のネットで販売するようになりました。

 

山手線界隈のブックオフで閉店した「目白店」2013年12月閉店、「高田馬場店(戸山口側)2013年6月閉店、「原宿店」2007年9月閉店、「北千住駅西口店」2015年1月閉店は、まだ記憶に新しいお店でよく通いました。最近は、秋葉原店、池袋サンシャイン60通り店、赤羽駅東口店、近くの千駄木店がメインで、たまに大塚駅前店、上野広小路店、新宿駅西口店、新宿駅東口店に行きます。

文庫の中の清張

今宵も清張ミステリー - 松本清張

文庫は手軽に読めて、かさばらず、電車の中でもバックから取り出してサッと読める。

 

原則として作品の最終形なので誤植や内容の矛盾は修正されている。(東野圭吾「白銀ジャック」 (実業之日本社文庫) のように文庫から単行本の例外もある)

 

清張作品も、いままでに多くの出版社の文庫に収録されている。

 

代表的なのは、新潮文庫(新潮社)、文春文庫(文藝春秋社)、講談社文庫(講談社)、角川文庫(角川書店)、光文社文庫(光文社)、中公文庫(中央公論社)、ちくま文庫(筑摩書房)、PHP文芸文庫、双葉文庫(双葉社)、河出文庫(河出書房新社)、小学館文庫、朝日文庫などである。

 

没後25年の2017年に4度目の連続ドラマ化された「黒革の手帖」(新潮文庫)は、清張の代表作になったかのようだ。歴代最年少の主役をつとめる武井咲の艶やかな写真が、従来のカバー全体を覆う。側には同じデザインのPOPが添えられていた。

 


(2017年8月赤羽駅構内の書店)

 

いまでも多くの作品を文庫で読むことができる。しかも復刊や改版の際に、文字の大きな新装版になり読みやすくなっている。

 

しかし、書店の文庫コーナーに行くと、新潮文庫、文春文庫、かつて清張ブームを牽引したカッパノベルスの光文社『松本清張プレミアム・ミステリー』以外はあまりパッとしない。

 

もともと講談社文庫に収録されていた「棲息分布」は長編ミステリー傑作選として文春文庫に、「花氷」「風紋」「殺人行おくのほそ道」は光文社『松本清張プレミアム・ミステリー』として復刻した。

しかし「草の陰刻」「黄色い風土」「連環」「黒い樹海」「塗られた本」「熱い絹」「ガラスの城」「異変街道」などは、まだ版権を手放さず、初版のころと同じカバーデザイン、版組のままである。

ちなみに「火の縄」「彩色江戸切絵図」「紅刷り江戸噂」「大奥婦女記」は、時代小説ブームの頃に新装版になっている。

 

先日、大阪の本町にある紀伊国屋書店の講談社文庫コーナーに、珍しく清張本が並んでいたのでおどろいた。

手の取って「草の陰刻」の奥付けをみると2019年に増刷していた。もちろんいまから見ると豆粒のような文字のままである。

 

中公文庫も「突風」「ミステリーの系譜」は従来のままであるが、「影の車」「中央流砂」「黒い手帖」「真贋の森」は10年以上前に改版が出ている。

 

追記(2024-2025)
「異変街道」は光文社『松本清張プレミアム・ミステリー』として文字が大きくなって復刻した。
「彩色江戸切絵図」「紅刷り江戸噂」も新たに光文社『松本清張プレミアム・ミステリー』に加わった。
「ガラスの城」「草の陰刻」「黒い樹海」は同じく講談社文庫でようやく文字が大きくなった新装版がでた。

東野圭吾『白夜行』の中の清張

今宵も清張ミステリー - 東野圭吾 - 松本清張

近鉄布施駅を出て、線路脇を西に向かって歩きだした。

十月だというのにひどく蒸し暑い。そのくせ地面は乾いていて、トラックが勢いよく通り過ぎると、その拍子に砂埃が目に入りそうになった。顔をしかめ目元をこすった。

笹垣潤三の足取りは、決して軽いとはいえなかった。本来ならば今日は非番のはずだった。久しぶりに、のんびり読書でもしようと思っていた。今日のために、松本清張の新作を読まないでいたのだ。

 

これは、東野圭吾の傑作「白夜行」の書き出しである。

笹垣刑事が読もうとしていた「清張の新作」は、なんだろう。

 

ここに出てくる、いか焼き屋のおばちゃんが読んでいた新聞の公害裁判記事から、冒頭シーンは1973年10月頃と推定される。

 

そこで1973年に刊行された作品を調べてみると、この年も多くの作品が刊行されている。

全集、文庫、再刊、新装版を除くと新作は次の4作である。

 

『遊古疑考』 新潮社 1973.9

『火神被殺』 文藝春秋 1973.8

『巨人の磯』 新潮社 1973.7

『表象詩人』 光文社 1973.2 (カッパ・ノベルス)

 

『遊古疑考』は古代史ジャンルなので除くとミステリーは3冊になる。

『表象詩人』は2月なので少し時期がずれている。したがって近いのは『火神被殺』か『巨人の磯』だ。2冊とも共通しているのは上製本(ハードカバー)で短編集である。

 

それまで活字本を読まなかった東野圭吾が高校生の頃、「松本清張」や乱歩賞作家「小峰元」の青春ミステリーで読書に目覚めた話はエッセイでよく書いている。

 

ちなみに笹垣潤三とは、「白夜行」の主人公たちが幼少期から罪を重ねていく迷宮入り事件を、刑事をやめてからも最後まで執拗に追っている主要人物である。

 

綾瀬はるか、山田孝之の2006年TVドラマ版では武田鉄矢が、堀北真希と高良健吾の2011年映画版では船越英一郎が、それぞれ笹垣潤三を好演している。

韓国版のリメイク『白夜行-白い闇の中を歩く-』も2012年に公開された。